千の夜をあなたと【完】
――――そして、夜が白んでくる頃。
汗に濡れたレティの体をイーヴは息も止まらんばかりに抱きしめた。
結局、想いを言葉に出すことはできなかった。
そんなレティの耳に、イーヴは掠れた声で囁いた。
『なぜ言わない? ひと言でいい、一度でいい……っ』
『……』
『お前に言葉ひとつ言わせるのに、どうすればいいのかわからない! 天才の、この俺が……っ』
『……イーヴ……』
『どうして、お前は……っ』
イーヴは切なげな声で呻くように言い、レティの肩に顔を埋めた。
イーヴの心が、切ないまでの愛情が、渇望が……。
触れた肩越しに、伝わってくるような気がした……。