千の夜をあなたと【完】
14.猜疑心
<side.リュシアン>
その日の夜。
リュシアンは自室でケネスからの報告を受けていた。
リュシアンはその緑色の目を見開き、強張った声で言う。
「なんだって? ……それは間違いないのか、ケネス?」
「はい。いくつかの情報筋に確認しましたが、ブラックストンがセレナ様とエスター卿の結婚を認めたというのは事実のようです」
ケネスは眉根を寄せ、言う。
リュシアンはダンと拳を壁に叩きつけた。
――――イーヴがこの事実を知っているのかどうかは知らない。
しかしブラックストンが認めたということは……ブラックストンとエスターは繋がっているということになる。
そしてその結果、リュシアンではなくエスターが伯爵位を継ぐことになってしまう。
実際の継承には結婚の事実とノースウェルズ王家の承認が必要だが、ブラックストンが認めれば王家の承認は下りたも同じだ。