千の夜をあなたと【完】
「ありえないだろ。そんなバカな……」
リュシアンは呻き、頭を抱え込んだ。
その目は昏い怒りで満ち、いつもの明るさはない。
リュシアンはしばし考えた後、顔を上げた。
「ケネス。明日の朝、ここを出てウェルシュ伯のところに出発する。馬車の準備を頼む」
「はっ」
「あと……レティも連れて行く。こうなった以上、イーヴにあいつをやるわけにはいかない」
そんな会話がリュシアンの部屋でなされていたことなど、レティとイーヴは知る由もなかった……。
<***>