千の夜をあなたと【完】



コンコンというノック音の後にリュシアンがひょいと顔を覗かせた。

ぐるりと部屋の中を見回し、目を見開く。


「なんだこりゃ。物置か?」

「……人が生活するための空間というよりはその方が近いかも……」


ぽそりと呟くように言ったレティを、リュシアンはひょいひょいと手招きした。

贈り物の間を抜けてドアに寄ったレティに、リュシアンは言う。


「オレ、これから海岸の方に散策に行くんだけど。お前も一緒に行かないか?」


リュシアンの誘いにレティはしばし考え込んだ。

今日は特に用事はない。

この間イーヴに森の方に連れて行ってもらったが、海岸には行ったことがない。

レティは頷き、言った。


「うん、行く」

「じゃあ身支度ができたら下に来い。馬車を用意しておくから」


リュシアンは言い、ぱたんとドアを閉じた。

レティはそれを見送った後、急いで外出の準備を始めた。



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