千の夜をあなたと【完】
――――10分後。
仕度を終えたレティはリュシアンが用意した馬車に乗り込んだ。
馬車に入ると、既にリュシアンとケネスが座っていた。
「お待たせ」
「お、早かったな。じゃ、行こうか」
リュシアンの言葉とともに馬車が動き出す。
レティは座席に座り、窓の外の風景を眺めていた。
馬車は街中を抜け、街外れの方へと走っていく。
しかし。
「……?」
レティは首を傾げた。
馬車は海の方ではなく山の方へと走っていく。
レティはリュシアンを振り返り、息を飲んだ。
その顔には苦しげな色が浮かんでいる。
なぜリュシアンは、こんな表情をしているのか……。
驚くレティに、リュシアンは真の目的地とその理由を話し始める。
それはレティには全く想定外のことだった。
話を聞き終わったレティは馬車に揺られながら、呆然とリュシアンを見つめていた……。