千の夜をあなたと【完】
<side.イーヴ>
その日の夕刻。
クロフト男爵の屋敷に戻ったイーヴは屋敷の中がどことなくざわついていることに気が付いた。
通りかかった家令を捕まえ、何があったのかを聞く。
そして家令の言葉に、イーヴは目を見開いた。
「実は。昼過ぎから、レティーシャ様の姿が見当たらないのです」
「……何?」
「そして、リュ……」
イーヴは最後まで聞かずに踵を返した。
レティの部屋に駆け込み、部屋の中を見回す。
――――物で溢れかえったレティの部屋。
けれどレティの姿はどこにもない。
「……っ……」
イーヴは両手をぐっと握りしめた。
レティはどこに行ったのか?
まさか……。