千の夜をあなたと【完】



<side.イーヴ>



その日の夕刻。

クロフト男爵の屋敷に戻ったイーヴは屋敷の中がどことなくざわついていることに気が付いた。

通りかかった家令を捕まえ、何があったのかを聞く。

そして家令の言葉に、イーヴは目を見開いた。


「実は。昼過ぎから、レティーシャ様の姿が見当たらないのです」

「……何?」

「そして、リュ……」


イーヴは最後まで聞かずに踵を返した。

レティの部屋に駆け込み、部屋の中を見回す。

――――物で溢れかえったレティの部屋。

けれどレティの姿はどこにもない。


「……っ……」


イーヴは両手をぐっと握りしめた。

レティはどこに行ったのか?


まさか……。



< 396 / 514 >

この作品をシェア

pagetop