千の夜をあなたと【完】
キーラは二人の父、リカードの妹で二人にとっては叔母に当たる。
その隣で、小太りの紳士――トマスがどこかほっとしたような表情で口を開く。
「ケネスから話は聞いていたが、やはり実際にこの目で見るまでは信じられなくてね。君たちが無事で、本当に良かった」
「トマス叔父様……」
「さ、積もる話は山のようにあるが、まずは一息ついてくれ。落ち着いたら今後のことについて話そう」
トマスは二人の顔を見比べながら言う。
トマスは落ち着いた柔和な雰囲気で、リカードと雰囲気は対照的だが、数年前のスコットランド戦役では巧みに兵を動かし功績を残した。
――――柔和だが、それなりにやり手。そういう印象だ。
二人はトマスの言葉にこくりと頷いた。
その後、二人はジェイクの案内で各自の客室へと案内された。