千の夜をあなたと【完】
それぞれの客室で一息ついた後。
二人はジェイクに案内され、トマスの執務室へと向かった。
執務室にはキーラとその娘、アマンダの姿もある。
アマンダはリュシアンの姿を一目見るなり、駆け寄った。
「リュシアンっ!」
「久しぶりだね、アマンダ。元気だったかい?」
アマンダはリュシアンより5つ年下の15歳で、父譲りの黒髪と琥珀の瞳が印象的な少女だ。
リュシアンとアマンダは3年前に許嫁となったが、それはアマンダの強い意向でそう決まったらしい。
リュシアンも満更でもなく、二人はあの事件がなければ今年の今頃には婚儀を挙げる予定だった。
トマスはリュシアンにしがみついた娘に、ため息交じりに言った。
「アマンダ、私達はこれから大事な話がある。リュシアンとは後で夕飯の時にでもゆっくり話しなさい」
「わかりましたわ、お父様」