千の夜をあなたと【完】
『今はそう思うのも仕方ないでしょう。私はあなたの信頼を裏切った、それは事実ですからね』
『……っ……』
『けれど私以上にあなたを理解し、愛する人間はいない。これは神に誓って言えますよ、セレナ?』
『……エスター様……』
『あなたに私の気持ちが伝わるまで、私は何度でもあなたに言います。愛していますよ、セレナ……』
言葉とともに優しい口づけが落とされる。
――――毎夜繰り返される、囁き。
セレナの心も体も、その言葉と甘い快楽に溶けていく。
何も考えず、エスターに身も心も任せてしまえば、自分は楽になれるのだろう。
けれど……。
自分の心が、見えない。
どうすればいいのか、わからない……。
セレナは大きなため息をつき、その長い睫毛をそっと伏せた。
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