千の夜をあなたと【完】
<side.イーヴ>
12月上旬。
イーヴはグロスターの自室で自らの小隊の訓練計画を練っていた。
ブラックストンの居城は黒煉瓦でできており、グロスターの街の中でも一際異彩を放つ存在だ。
その大きさと堅牢さから、居城は『黒石の城』もしくは『知識の城』と呼ばれている。
イーヴはいつも自室か2階にある図書館に入り浸っていたが、この一年は兵舎で過ごす時間の方が長い。
コルウィンを出て約一か月半。
グロスターに戻ったイーヴはすぐに父のダグラスのところへと向かった。
そしてリュシアンが生きていることを伝え、エスターに与えた承認を取り消してほしいと依頼した。
……が。
『わしはあくまでブラックストンとしての承認を与えただけだ。実際の継承には王家の承認が必要になる。……それにもう、商業権を譲り受けてしまっている』
ダグラスはイーヴを見、ため息交じりに言った。
イーヴは目を剥き、ダン! と父の執務机を叩いた。