千の夜をあなたと【完】
『ですが父上が承認すれば、それは王家の承認が下りたのと同じです!』
『だがもう、二人は婚儀を挙げたという情報が入っている。今となっては……』
『ですからこうして父上のところに来ているのです。リュシアンが継承すべき伯爵位を、エスターが継承することになる。それはあってはならないことです!』
いつになく激しい口調で言い募るイーヴに、ダグラスはしばし考え込んだ後、大きなため息をつき、言った。
『……わかった。それではわしの名前で、エスター卿からの依頼があってもしばらく承認しないよう、ノースウェルズ王家に連絡しておこう』
『ありがとうございます、父上』
『だが王家もいつまでも承認しないというわけにはいかないだろう。それにエスター卿はなかなかのやり手だ。あまり時間はないぞ?』
父の言葉にイーヴは頷き、頭を下げた。
とりあえず、これでなんとか時間は稼げた。
その後、イーヴは自らの小隊の訓練とティンズベリーの調査を始めた。
次の手を討つためだ。