千の夜をあなたと【完】
2.イーヴの申し出
1月中旬。
雪の中、巡礼に来た人々が表の通りを歩いていく。
ウェルシュはウェールズの中央にあり、周りを山に囲まれているため冬になると雪に阻まれて人の往来が難しくなる。
今この町にいる人々は、恐らくこの町で冬を越すのだろう。
レティは自室の窓から大通りの様子を眺めていた。
ここに来てから、もう少しで三か月になる。
「……」
レティは窓に背を向け、ベッドの端に座った。
あの手紙は、届いたのだろうか……。
イーヴと離れてから、レティはイーヴのことを思い出すことが増えた。
ライナスのことを忘れたわけではない。けれど……
あの一週間で、レティの心はイーヴに強く惹かれていた。
イーヴが自分に向けてくれる情熱、愛情……。
コルウィンに居た時は突然のことで混乱し、あまりじっくり考える時間がなかったが、今は時間が有り余っているので考えずにいられない。
あの眼差しも、レティを抱き寄せた強い腕も……。
レティの体を奪ったあの情熱も、体の奥に叩きつけられた熱い想いも……。
イーヴの全てが、忘れられない……。