千の夜をあなたと【完】
神でさえ恋から逃れることはできない。
ましてや人ならば、恋に捕われたら一瞬で狂ってしまう……。
ずっと胸にあった面影。
ずっと忘れられなかった、あの青灰色の瞳……。
レティはぐっと目を瞑り、息をついた。
イーヴに会いたい。
と切ないため息をついた、その時。
コンコンと部屋の扉がノックされた。
しばしの沈黙の後に、リュシアンが顔を出す。
「……レティ。ちょっといいか?」
「うん、何?」
リュシアンは部屋の中に歩み入り、長椅子に座った。
その手には書簡を持っている。
レティもリュシアンの隣に座った。
「……あいつから、これが来た」
「あいつ?」
「イーヴだよ」