千の夜をあなたと【完】
リュシアンの言葉にレティは目を丸くした。
レティを一瞥し、リュシアンは手にした書簡を広げる。
レティも横からそれを覗き込んだ。
それに書いてあった内容は……。
「……え? 出兵に協力する?」
「小隊とともに、こちらに向かうと言ってきている。多分、コルウィンに来ていたあの連中だろう」
リュシアンは腕を組み、呟くように言う。
レティはコルウィンで何度か見かけた、黒い皮鎧を着た兵士達を思い出した。
「人数は約50人。今からここで兵を集めて訓練するよりは、既に訓練された兵を使った方が効率はいいだろうが……」
「……」
「だが、あいつを信用していいのか……」
頭を抱え込みながらリュシアンは言う。
先日、ケネスがノースウェルズ王家からの情報を入手した。
どうやらエスターは伯爵位の承認を王家に求めたようだが、王家はそれを保留にしているらしい。
そしてどうやらそれは、ブラックストンからの依頼によるものらしい。
恐らく後ろでイーヴが手を回したのだろう。