千の夜をあなたと【完】




「ブラックストンはよくわからん。あいつが何を考えてるのか、オレには……」


リュシアンは混乱したように言う。

レティは兄の顔を横からじっと見つめた。

そんなレティを見、リュシアンは口を開く。


「レティ、お前はどう思う?」


リュシアンの言葉にレティはしばし考えた後、口を開いた。


「よくわからないけど。イーヴはリュシアンを騙すようなことはしないと思う」

「……」

「それにイーヴは侯爵家の息子だし……。リュシアンが継いでも、エスターが継いでも、侯爵家としては別にどっちでも構わないんじゃないかな?」


レティの言葉に、リュシアンは憑き物が落ちたかのように目を見開いた。

確かに侯爵家の中でも一・二を争うブラックストンからすれば、どちらが継いでもさほど問題はないだろう。

土地が隣接しているわけでもないし、過去に戦争があったわけでもないし、大きな商業取引をしているわけでもない。


「イーヴは純粋にリュシアンを助けたいだけだと思う。リュシアンに伯爵位を継いでもらいたいって……そう思ってるんじゃないかな?」


< 419 / 514 >

この作品をシェア

pagetop