千の夜をあなたと【完】
<side.イーヴ>
――――それは、夜半過ぎのことだった。
皆が寝静まった深夜。
突然、イーヴの部屋のドアが狂ったように叩かれた。
はっと身を起こしたイーヴの目にメイドの姿が映る。
いつもイーヴの部屋を担当しているメイドではなく、ディナリアの世話を担当しているメイドだ。
「どうした?」
「あのっ、奥方様が……っ!」
メイドは慌てふためいた様子でイーヴに何かを言おうとする。
しかし慌てすぎており、言葉にならない。
「……」
イーヴは白い夜着の上に手早くガウンを羽織ると、部屋を出た。
そのままディナリアの部屋へと歩いていく。
ディナリアの部屋の扉が見えた時、イーヴは眉根を寄せた。
……血の匂い。
そして……ディナリアの、呻くような声。