千の夜をあなたと【完】
「……!」
イーヴはとっさに駆け出した。
ディナリアはそろそろ臨月だ。
あまり気にしていなかったが、メイドの誰かがそんなことを言っていた気がする。
イーヴはノックもせずディナリアの部屋に入った。
そして、目の前に広がる光景に息を飲んだ。
「……」
大量の血の中に横たわるディナリアの姿。
その顔は青ざめ、土気色だ。
横を見ると赤子の姿がある。
どうやら出産は終わったらしい。
……が。
ディナリアの意識は朦朧としており、焦点が定まらない。
――――死を映している、その瞳。
イーヴは息を飲んだ。
隣に控えていた侍医が苦しげな表情で口を開く。