千の夜をあなたと【完】
「ディナリア様はだいぶ体が弱っておいででした。恐らく出産に耐えられる状態ではなかったのだと思われます……」
「……」
「わたくしどもも手は尽くしましたが……」
侍医は震える声で言う。
イーヴはぐっと両手を握りしめ、ベッドの周りを見回した。
見ると。
イーヴにも見覚えのある薬草や薬がサイドボードに置かれている。
「……おい、これは?」
と言ったイーヴに、侍医は低い声で答えた。
「先ほどまで非常にお苦しみでしたので、この薬を与えて……」
侍医は言いかけたが、イーヴの顔がみるみるうちに青くなるのに気付き、言葉を止めた。
イーヴはサイドボードに置かれた薬草を凝視した。
これは……。