千の夜をあなたと【完】
3.作戦会議
3月中旬。
レティは朝からその時を首を長くして待っていた。
曇天の下、雪がちらほらと舞っている。
その知らせが入ったのは、5日前の夜だった。
イーヴが小隊を連れ、グロスターを出発したらしい。
やがて街路の向こうから、黒い鎧を着た騎馬の集団が姿を見せた。
集団はウェルシュ伯の屋敷の門をくぐり、中へと入ってくる。
その先頭に見覚えのある姿を発見し、レティはドキッした。
陽を溶かしたかのような金の髪に、物憂げな青灰色の瞳。
騎上で颯爽と馬を操る姿は息を飲むほどに格好いい。
昔はイーヴは馬に乗ったり、剣を振るったりすることはほとんどなかった。
背も今よりは低かったため、格好いいというよりは綺麗だなという印象の方が強かったのだが……。
騎士然としたイーヴは、思わず目を奪われてしまう格好良さだ。
そんなことはとても本人には言えないが。
騎馬の集団は裏手にある馬舎の方へと向かっていく。
レティも踵を返し、応接室の方へと向かった。