千の夜をあなたと【完】



執務室に入ると既にエリオットが中で待機していた。


「奴らの動向は?」

「はっ。こちらの予想通り、今日の午前にはマシュー川を渡ると思われます」

「そうか……」


エスターはひとつ息をつき、天井を振り仰いだ。

――――ついにこの日が来てしまった。


兵の数はこちらの方が多い。

だがイーヴがいる以上、勝算なしで来るとは思えない。

そしてイーヴは、あの剣を持っている。

――――『報復するもの』。


ライナスが死んだという情報はエスターのところに入ってきているが、イーヴがレティと再会できたのかどうかはわからない。

もし再会できていないのであれば、イーヴが自分に向けて『報復するもの』を振るう理由は充分にある。


「兵達に警戒を怠らないよう指示しておけ。今日、奴らはここに現れるはずだ」

「は、畏まりました」


エリオットは緊張した様子で執務室を出て行く。

エスターはその背を眺めた後、執務室の机から小型の銃を取り出した。



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