千の夜をあなたと【完】
<side.リュシアン>
門の前にいた兵の集団が、一斉に裏山の方へと向かっていく。
リュシアンは兵が粗方いなくなったのを確認した後、自らの兵とともに一気に門をくぐった。
手筈通り部隊の半分はトマス伯とともに屋敷の入り口を固め、もう半分はリュシアンとともに屋敷の中へと侵入する。
「来たぞ! 敵だっ」
エスターの兵達がリュシアンめがけて剣を片手に駆け寄ってくる。
リュシアンは思わず苦笑した。
「敵って。どっちがだよ……」
そもそも、この屋敷の主であるべきは自分だ。
二年ぶりの懐かしいティンバートの屋敷。
リュシアンは剣を抜き、身構えた。
そんなリュシアンの横から、ウェルシュの兵達がどんどん屋敷の奥へと侵入を開始する。