千の夜をあなたと【完】



「……銃!?」


リュシアンは驚き、思わず声を上げた。

銃はまだ東方でしか作られておらず、ウェールズで見ることはめったにない。

予想もしない武器の登場にリュシアンは息を飲んだ。


「……運命の神が選ぶのは、あなたか、私か?」


言いながらエスターは引き金を引く。

リュシアンはとっさに走り出し、それを避けた。

しかしエスターは休むことなく、リュシアンに銃を向ける。

バスッ、バスッという音とともに弾が壁にめり込んでいく。


「……っ!」


リュシアンは必死に逃げたが、そもそも銃と剣では敵うはずがない。

呆然と足を止めたリュシアンに、エスターはくすりと笑い、胸元に銃口を向けた。

リュシアンはなすすべもなく、青ざめた顔で立ち尽くした。


「……どうやら、運命の神は私を選んだようですね」

「……っ」

「さて、どうしますか? あなたは……」


< 468 / 514 >

この作品をシェア

pagetop