千の夜をあなたと【完】
と、エスターが言いかけた時。
ドアの向こうから誰かの叫び声がした。
「リュシアン、伏せろ!」
リュシアンは反射的にばっと腰を落とした。
その頭上をひゅんっと銀色の何かが飛んでいく。
リュシアンの目前で、それはエスターの銃を持つ手の肩口に突き刺さった。
「……っ!!?」
エスターは目を見開き、剣が突き刺さった自分の肩を見た。
ぽろっと手から銃が滑り落ちる。
カタンと床に落ちたそれを、リュシアンはとっさに駆け寄って蹴り飛ばした。
振り返ったリュシアンの目に映ったのは……。
「……間一髪だったな」
どこかほっとした様子のイーヴがドアの所に立っていた。