千の夜をあなたと【完】



――――その日の朝。

レティは目に涙を滲ませ、ぼんやりとカーテンの隙間から差し込む朝日を見つめていた。

今日はイーヴが戻ってくる日だ。

結局、この日まで引き延ばしてしまった……。

イーヴが戻ってくるまでにここを出なければと思っても、心の中に渦巻く迷いがレティをこの屋敷に引き止めていた。


レティは起き抜けのまま机に座った。

引出しから紙とペンを取り、手紙を書きだす。



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イーヴリオン様


ティンズベリーへの出兵、お疲れ様でした。

兄の力になって頂いたこと、とても有難く思っています。

あなたが不在の間にいろいろ考えたのですが

やはり別々の道を歩むことが、お互いの幸せではないかと


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「……」


レティはそこまで書いたところでペンを止めた。

ぽたり、と紙に涙が落ちる。


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