千の夜をあなたと【完】
窓から入ってくる風に吹かれ、机の上にあった丸めた紙のようなものがふわりと床に落ちた。
レティは普段、あまり文字を書かない。
珍しいと思いイーヴはそれを取り上げた。
丸めてあったそれを軽く広げてみる。
――――その瞬間。
イーヴの顔から血の気が引いた。
目を見開き、紙を凝視する。
「……っ!?」
頭の中が真っ白になっていく。
この文面は……。
イーヴの胸の中に焼けるような何かが突きあげる。
――――怒りと、哀しみと、焦り。
それらはイーヴの胸の中で混ざり合い、昏い激情となって胸を焼いていく。
自分たちは想いを通じ合わせたのではなかったのか?
愛を交わし、お互いの全てを分かち合い……。
あの甘い記憶を、切ないまでの恋情を、レティは忘れるとでも言うのだろうか?