千の夜をあなたと【完】
陽が中天に上り、木々の影が短くなる。
レティは東屋を出、屋敷の玄関の方へと向かった。
寝不足のせいか、頭がクラクラし足元が覚束ない。
レティは玄関を入り、廊下を抜けて自分の部屋の方へと向かった。
ドアのノブに手をかけ、そっと回してドアを開ける。
そして、顔を上げた瞬間。
レティは予想だにしない人の姿に思わず息を飲んだ。
陽の光を織り上げたかのような真っ直ぐな金髪に、物憂げな青灰の瞳。
忘れもしない……愛しい人の姿。
しかし、イーヴはいつになく鋭い視線でじっとレティを見つめている。
その瞳によぎる昏く激しい感情に、レティは目を見開いた。
「……イーヴ……」