千の夜をあなたと【完】



立ち尽くすレティの前で、イーヴはつかつかとレティの前に歩み寄った。

その手には紙のようなものを持っている。


皺くちゃになった、その紙……。

レティはそれに気づき、ひっと小さく叫んだ。


「……お前……」


イーヴはそれをはらりと床に放ると、ぐいとレティの腕を掴んだ。

怒りと哀しみに満ちた表情に、レティは胸が引き裂かれるような気がした。


イーヴはうっすらと笑い、レティを見下ろす。


「お前は、本当に、馬鹿だね……」

「……っ……」

「なぜそんなに馬鹿なのか。神を恨みたい気分になるよ」


イーヴはレティの後頭部をつかみ、ぐっと自分の方へと引き寄せた。

……至近距離にある、物憂げな青灰色の瞳。

けれどその目にはいつにない鋭さが宿っている。


「でもね。今度ばかりは逃げられないよ、お前?」

「……イーヴ……」

「さ、選びなよ。二つに一つだ」



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