千の夜をあなたと【完】
イーヴは目を細め、じっとレティを見る。
レティはなすすべもなくイーヴを凝視していた。
「まず一つは、……フレイ侯爵家の養子になって、俺と結婚する。正妻として、ね」
「……え……っ」
「そして二つ目は、俺とこのまま二人しか知らない場所に行く。その場合、お前はもう俺以外の人間と会うことはできない。その場所から出ることもできない」
イーヴは言い、くすりと笑った。
その目に宿る真剣な光にレティは息を飲んだ。
イーヴは本気で言っているのだ。
「さ、どうする? 言っとくけど、それ以外の選択肢はないよ」
「……っ」
「それ以外の何かを選ぼうとしたら、俺は速攻でお前を縛り上げて俺しか知らない場所に連れて行く。……安心しなよ? 衣食住は不自由させないから」
くすくすと笑い、イーヴは続ける。
レティは呆然とイーヴを見上げていた。
どこか狂気じみたその瞳から、切ないまでの愛情が伝わってくる。
イーヴは無言のレティをしばらく見つめた後、そっと息をついた。