千の夜をあなたと【完】




「で、レティ。お前、どっちを選ぶ?」

「……」


レティはまじまじとイーヴを見た。


既に聞かなくても答えは出ているような気がするのだが。

根回しまで終わっているわけだし。


レティはイーヴを見上げ、口を開いた。


「……養子になる」


レティの言葉に、イーヴは嬉しそうに目を細めた。

……心底嬉しそうな、その笑顔。

めったに見ないその柔らかい笑顔に、レティはドキッとした。


「そう。じゃあ決まりだな」

「でもフレイ侯爵家ってどこにあるの?」

「ウェールズの南の方だよ。森と湖に囲まれた、風光明媚な場所だ」

「へぇ……」


レティは目を輝かせた。

イーヴの計画では、レティは『侯爵家の遠縁の娘』としてフレイ侯爵家の養子となり、一年ほど過ごした後グロスターに呼ぶつもりらしい。

その間二人は離れて暮らすことになるが、これまでの別離を思えば全然耐えられる。


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