千の夜をあなたと【完】
――――ここに来て2か月。
湖も森も、レティはとても気に入っていた。
ハワードは『淑女らしくしなさい』などとレティに言うことはなく、レティの好きなようにさせてくれている。
ちなみにレティの名前は『レティシア・マリア・フレイ』となった。
マリアはハワードの亡くなった妻の名前で、それをミドルネームにすることで、ハワードの血縁だと示すことになるらしい。
……そして。
ここに来てから、レティはイーヴと毎日手紙のやり取りをしている。
内容は毎日の出来事だったり、世間で起きた出来事だったり、これからのことだったり、とにかく様々だ。
毎日手紙を運んでいるせいか、エインセルはだいぶ体が締まってきた。
この頃は鷹というより鷲に近い目つきをするようになっている。
少し心配ではあるが、エインセルにはもう少し協力してもらわなければならない。
二人の視線の先で湖の水面が波立ち、魚がぴょんと跳ねる。
レティはハワードとともに穏やかな午後のひと時を楽しんだ。