千の夜をあなたと【完】



むっつりとした顔でレティは言った。

そんな二人をセレナが楽しげにくすくす笑いながら眺めている。

そのお腹は少しふっくらと膨らんでいる。

レティはセレナに向き直り、心配そうに言った。


「セレナ、ここに来て大丈夫だったの?」

「大丈夫ですわよ、お姉様。もう安定期に入ってますから。少し動いた方がいいってお医者様も仰ってましたしね」


セレナはにっこり笑って言った。

昔から変わらない、その純粋な笑顔。

レティはまじまじと妹を見た。


セレナが妊娠していると知ったのはリュシアンの結婚式で会った時のことだった。

どうやら二人がロンカスタに向かった頃には既にお腹に新しい命が宿っていたらしい。


「あ、そうだ、レティ。これを渡すわね?」


アマンダは言い、荷物の中から何やら一冊の本を取り出した。

レティは渡された本をまじまじと見た。

見覚えのあるその本は……


「ベスティアリー……」



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