千の夜をあなたと【完】




ぱらぱらとめくると、イーヴの訳してくれた紙が挟んである。

二年前の誕生日にイーヴがレティにくれたものだ。

レティはくいいるように本を見つめた。


「ほら、今、レティの部屋を私が使っているじゃない? で、この間片付けていたら、この本が出てきたの」

「……」

「で、これは多分、大事なものなんじゃないかなって思って。持ってきてみたの」


アマンダの言葉にレティは深く頷いた。

――――懐かしい想い出。

あと半年であれから丸三年になる。

レティは自分の視界が霞んでくるのを感じた。


その後、二人は一週間ほどフレイ伯爵の屋敷に滞在した。

若い女性を久しぶりに迎え、屋敷は灯がついたように明るくなった。

そして雪がちらつき始めた日、セレナはロンカスタへ、アマンダはティンズベリーへと戻っていった。



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