千の夜をあなたと【完】



レティは目の前に置かれた書簡を手に取った。

毎日目にしている文字と同じ文字がそこに並んでいる。

しかし内容に目を通したレティは、思わず息を飲んだ。


「……え? 今月末に結婚!?」


突然のことにレティは目を丸くした。

今月末、って……。

驚くレティに、ハワードは目を細めて笑いながら言う。


「もう少しするとここは雪に閉ざされる。そうすれば3月まで、お前さんはここから出ることができなくなる」

「……」

「その前にお前さんを呼び寄せて、式を挙げたいということなんだろうな。……もうお前さんも、わしの娘として何度か舞踏会に出ている。もう問題ないと踏んだんだろう」


ハワードはレティを優しい瞳で見つめる。

レティは体を固まらせ、ハワードの言葉を聞いていた。


これまでの話から、レティは結婚は来年の春頃かなと漠然と思っていた。

一年だとそのくらいになるのかな、と……。

けれど思ったより早くその時は来た。


――――嬉しい。


< 506 / 514 >

この作品をシェア

pagetop