千の夜をあなたと【完】
レティは目の前に置かれた書簡を手に取った。
毎日目にしている文字と同じ文字がそこに並んでいる。
しかし内容に目を通したレティは、思わず息を飲んだ。
「……え? 今月末に結婚!?」
突然のことにレティは目を丸くした。
今月末、って……。
驚くレティに、ハワードは目を細めて笑いながら言う。
「もう少しするとここは雪に閉ざされる。そうすれば3月まで、お前さんはここから出ることができなくなる」
「……」
「その前にお前さんを呼び寄せて、式を挙げたいということなんだろうな。……もうお前さんも、わしの娘として何度か舞踏会に出ている。もう問題ないと踏んだんだろう」
ハワードはレティを優しい瞳で見つめる。
レティは体を固まらせ、ハワードの言葉を聞いていた。
これまでの話から、レティは結婚は来年の春頃かなと漠然と思っていた。
一年だとそのくらいになるのかな、と……。
けれど思ったより早くその時は来た。
――――嬉しい。