千の夜をあなたと【完】
驚くレティの視線の先で、イーヴはくすりと笑ってペンダントを裏返した。
ペンダントの裏には規則正しい間隔で小さな傷が刻まれている。
――――シャムロックの木彫りのペンダントに祈りを千夜捧げると、願いが叶う。
レティはペンダントと一緒に同封した手紙の内容を思い出し、息を飲んだ。
まさか、この傷は……。
じっとペンダントを見つめるレティの耳元に、イーヴは掠れた声で囁く。
「あの夜。……お前を失った夜から、俺は毎夜、このペンダントに祈りを捧げてきた」
「イーヴ……」
「ちょうど、今日で千夜だ。……ようやく、俺の願いが叶った……」
イーヴは言い、再びレティを強く抱きしめた。
――――切ないまでの祈り。
レティはその切なさに、愛情の深さに、心が震えるような気がした。
「ずっとこの日を夢見てきた。……もう離さないよ、レティ?」
イーヴの腕が、唇が、レティの肌に触れる。
……優しく温かい肌。
愛しいぬくもり。
しだいに深くなる唇を受けながら、レティはそっと目を瞑った。