千の夜をあなたと【完】
「で、その舞踏会にケヴィン様もいらっしゃるので……」
言いながらセレナの頬が赤く染まっていく。
ケヴィンこと、ケヴィン・ウィリアム・バーンズはノースウェルズ王家の王子だ。
昔からセレナは彼の奥方になることを夢見てきた。
……それは物語の世界の、王子と姫の恋愛への憧れとほとんど同じだ。
セレナより5つほど年上のケヴィンは武芸に優れ、またイーヴやエスターほどではないが容姿も良く、何より爽やかで男らしい性格だ。
頬を染めたセレナに、エスターは楽しげにくすりと笑った。
「……ケヴィン様と踊れるようにダンスの練習をしたい、ということですね?」
「はい……」
「了解いたしました。それでは明日から、ダンスの時間を増やすことにいたしましょう」
エスターはセレナに優しく笑いかけた。
……いつも穏やかで、艶やかなアンバーの瞳。
その瞳の中に一瞬宿った鋭い光に、この時のセレナは気付いていなかった……。
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