千の夜をあなたと【完】




「で、その舞踏会にケヴィン様もいらっしゃるので……」


言いながらセレナの頬が赤く染まっていく。

ケヴィンこと、ケヴィン・ウィリアム・バーンズはノースウェルズ王家の王子だ。

昔からセレナは彼の奥方になることを夢見てきた。

……それは物語の世界の、王子と姫の恋愛への憧れとほとんど同じだ。

セレナより5つほど年上のケヴィンは武芸に優れ、またイーヴやエスターほどではないが容姿も良く、何より爽やかで男らしい性格だ。

頬を染めたセレナに、エスターは楽しげにくすりと笑った。


「……ケヴィン様と踊れるようにダンスの練習をしたい、ということですね?」

「はい……」

「了解いたしました。それでは明日から、ダンスの時間を増やすことにいたしましょう」


エスターはセレナに優しく笑いかけた。

……いつも穏やかで、艶やかなアンバーの瞳。

その瞳の中に一瞬宿った鋭い光に、この時のセレナは気付いていなかった……。



<***>

< 55 / 514 >

この作品をシェア

pagetop