千の夜をあなたと【完】
「……」
見ると、一人の青年が屋敷の方をじっと見つめている。
その視線の鋭さにレティは息を飲んだ。
艶やかな長い亜麻色の髪に、万年雪のような冴え冴えとした蒼い瞳。
精悍な顔つきで、長身で均整のとれた体つきをしている。
年の頃は20歳くらいだろうか。
はっきり言ってイーヴにも引けを取らないほど整った容貌だ。
青年はレティの視線に気づくと、驚いたように目を丸くした。
「……」
青年はその蒼い瞳でじっとレティを見据えている。
レティは一歩青年に近づき、口を開いた。
「……あの、ここはティンバート伯爵家の庭ですが」
「……」
「迷われたのですか?」