千の夜をあなたと【完】
5.泣かせてやろうか?
翌日。
レティは兄のリュシアンとイーヴとともに、母の墓参りに来ていた。
母・ロレーナの墓はティンズベリー郊外の小高い丘の上にある。
代々ティンバート家の墓はこの丘の上に作られており、先祖の墓がずらっと並んでいる。
リュシアンとレティは持ってきた花輪を母の墓に掛けた。
ちなみにセレナも一緒に来る予定だったのだが、体調不良で急遽キャンセルとなった。
「……ロレーナ母上。どうか、ティンバートとティンズベリーをお守りください」
リュシアンは母の墓の前に跪き、祈りを捧げている。
レティもその隣に跪き、両手を組んだ。
「お母様、安らかにお眠り下さい……」
もしイーヴに嫁いだら、なかなか墓参りに来ることはできなくなる。
あと何回、ここに来れるだろうか……。
レティはじっと母の墓を見つめた。
母が亡くなった時、レティは1歳だったためほとんど母のことは覚えていない。
もし母が生きていたら、いろいろ相談できたかもしれないのに……。
――――嫁ぐにあたっての心構え、とか。
としんみりしたレティに、後ろに立っていたイーヴが声をかける。