千の夜をあなたと【完】
ふもとまで下りたものの、馬車がないことに気付きレティは首を傾げた。
辺りを見回すと、馬車を停めた場所とは雰囲気が違う気がする。
となると、ここではないのだろう。
「おかしいなー……」
レティはもう一度丘の方へと戻った。
別の道からもう一度、ふもとの方へと降りてみる。
が。
「……」
また馬車がない。
レティは辺りを見回した。
辺りには樫の木や柊の木が鬱蒼と生い茂り、昏い森のようになっている。
曇天の下、森は不気味に静まり返り鳥の声ひとつしない。
まずい、迷ったかも……?
と思ったその時。
ピカッと空が光り、雷鳴が鳴り出した。
レティは息を飲み空を見上げた。
「……っ!!」