千の夜をあなたと【完】




レティの顔がしだいに青ざめていく。

レティは昔から雷がダメで、小さい頃は雷が鳴り出すと部屋の窓を閉めてベッドに入って震えていた。

大人になった今ではそこまでではないが、それでもやはり……怖い。


レティの頬にぽつっと雨粒が落ちた。

どうやら雨が降りだしたらしい。

レティは両手で肩を抱きしめながら、辺りを見回した。

どうしよう……。

と涙目になった、その時。


「お前、前に来た時もこっちの道に来ただろ。学習能力ないの、お前?」


低いアルトの声とともに、見覚えのある人影が見えた。

曇り空の下でも映える金色の髪に、トレードマークの黒衣の服。

はっと目を瞠ったレティの前に歩み寄り、イーヴはうっすらと笑った。


「そんな高等技術、あるわけないか。馬鹿だからな、お前」

「……」


馬鹿と言われようが何と言われようが、イーヴの姿をここまで有難いと思ったことはない。



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