千の夜をあなたと【完】
「……そ。どうしてもここにいたいって訳?」
「……」
「じゃあずっといたら? どうぞご自由に」
「……」
「ちなみにこの山、狼が出るらしいよ? 雷と狼、本当に怖いのはどっちだろうね?」
言い、イーヴはくるっと踵を返した。
そのまますたすたと丘の方へと歩いていく。
レティは呆然とその背を眺めていた。
……遠ざかっていく背中。
「……や、やだっ、待ってよっ」
レティの目尻から涙が零れ落ちる。
しかしイーヴは振り返らずに丘の方に歩いていく。
レティは混乱したまま、叫ぶように言った。
「待ってってば……待ってよっ……」
「……」
イーヴは何も言わずに歩いていく。
レティは恐怖に追い立てられるように無意識のうちに走り出した。
雷はまだ頭上で鳴っている。