千の夜をあなたと【完】



レティは泣きながら走り寄り、イーヴの腕を後ろから掴んだ。

イーヴはそこでようやく足を止め、レティを振り返った。

……その、どこか意地悪な楽しげな表情。

レティの胸にカッと憤りが込み上がる。

もう恐怖なのか怒りなのか悲しみなのか、わけがわからない。


「な、なんで……意地悪するの……っ」


と泣きながら言ったレティに。

イーヴはくすりと笑い、目を細めた。

いつもと違い、少し熱を帯びた青灰色の瞳がレティを見つめる。

レティはしゃくり上げながらイーヴの顔を見つめていた。


「なんで、か。……なんでだろうね?」


イーヴは言いながら、レティの頬にそっと手を伸ばした。

その美しい瞳が次第に熱を帯びる。

イーヴは指先でレティの涙を拭いながら、耳元に唇を近づけた。

――――ふわりと香る、薬草とハーブの香り。

思わずドキッとするレティの耳にイーヴがそっと囁く。


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