千の夜をあなたと【完】
「……本当にわからないわけ? お前」
「……っ」
「わかるまで泣かせてやろうか? ……お前の泣き顔、俺は嫌いじゃない」
甘いアルトの声、甘い瞳……。
思わず目を真ん丸に見開いたレティの耳に、イーヴはそっと口づけた。
……柔らかく、しっとりとした感触。
初めてのその感触に、レティは思わず息を飲んだ。
「……っ」
なぜか胸が物凄い勢いでバクバクと動き出す。
顔が真っ赤に染まっていく。
……何も考えられない。
イーヴはぼうっとするレティの頭の後ろに腕を回し、髪にそっと指を差し込んだ。
優しく髪を梳きながら、レティには聞こえない小さい声でぽそりと呟く。
「……泣き顔が一番可愛いなんて……、因果だよね、お前も」
言いながらイーヴはレティの髪を指先でくるくると弄ぶ。
レティは高鳴る鼓動を感じながら、呆然とイーヴを見つめていた。