千の夜をあなたと【完】
「それ、時間が経つごとに効能が弱まってくるから。早く飲んで?」
イーヴはレティの前に置かれた薬草スープを指差しながら言う。
レティはスプーンに手を伸ばしながら目の前に座っている青年を見た。
陽の光を織り上げたかのような真っ直ぐな金髪に、物憂げな青灰の瞳。
肌は透き通るように白く、黒でまとめたシックな衣服によく映えている。
そのどこか儚げな美貌は黙っていれば聖女か何かのように見えなくもない。
しかし頭も顔も良すぎるせいなのか、性格はかなり捻くれ屈折している。
曲がったヘソが胴体を一周して戻ってくるぐらいの屈折具合だ。
こいつは絶対にヘソから先に生まれたに違いない、とレティは昔から思っているのだが……。
「これ、一体何が入ってるの?」
「説明してもお前には理解できない。いいから早く飲んで?」
にべもない言葉。
しかしこの得体のしれない液体を口に入れるのは相当な勇気がいる。
思わずまじまじと皿を見つめるレティに、イーヴはどこか楽しげな声で言う。