千の夜をあなたと【完】



――――婚約してから一か月ほど経った頃。

レティはイーヴに聞いてみた。


『……ねえ。なんであたしを選んだわけ?』

『……?』

『あたしは物凄い美女ってわけでもないし、すごく頭がいいってわけでもないし。女らしいことは苦手だし、家柄だって釣り合うとは思えないし……』

『……』

『なんで、あたしを選んだわけ? あたしよりは、よほどセレナの方が……』


と言ったレティに。

イーヴはふんと鼻を鳴らし、腕を組んで言った。


『ま、そうだな。考えてみれば、お前には本当に何もないな』

『……っ』

『でもいいんじゃないの、別に』


イーヴはあっさりと言う。

レティは目を見開いた。

天下のブラックストンの後継者が、そんないい加減な結婚をしていいのだろうか?

と思ったレティだったが、続いたイーヴの言葉に言葉を失った。



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