千の夜をあなたと【完】
『俺は天才で、かつ地位も家柄も美貌も持ってる。だからお前は何も持つ必要はないよ』
『……』
『お前が持ってないものを、俺は全て持ってる。だから結婚するにあたって何も問題はない。わかった?』
自信に満ちたイーヴの言葉に、レティは驚愕のあまり背を仰け反らせた。
……いや、問題大アリな気がするんですけど……。
と言ってもイーヴが結婚すると決めている以上、しがない伯爵令嬢のレティは何も言えない。
しかし、そうは言っても……。
実際にブラックストン家に嫁いだら、どんな生活が待ち受けているのか。
全く想像がつかない。
「……さ、できましたよ、レティ様」
メイベルの声とともに、レティははっと我に返った。
今日はこれからセレナとともにダンスの練習をする予定だ。
レティはメイベルに礼を言い、着替えてホールへと向かった。