千の夜をあなたと【完】



2時間後。

ダンスの練習を終えたレティは、セレナとともに2階の食堂で一息ついていた。

セレナはこの頃、ダンスの練習に力を入れている。

その理由はレティも知っている。

レティはメイドが運んできた水を一口飲み、向かいに座った妹に笑いながら言った。


「セレナ、ケヴィン様と踊れるといいねー?」

「お、お姉様……っ」


セレナは頬を赤く染め、恥ずかしそうに俯いた。

その姿は本当に可憐で美しい。

なぜイーヴがセレナではなく自分を選んだのか、甚だ疑問だ。


「そういえば、お姉様。明日はお誕生日ですね?」

「あ、うん」

「お姉様は明日17歳になられて、夏にはご結婚なさる……。とても喜ばしいことですけれど、私、寂しいですわ……」


セレナは美しい翠の瞳を陰らせて言う。

……本当にセレナは純粋で、愛らしい。



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