千の夜をあなたと【完】
午後。
レティは図書室で一冊の本を前に首を傾げていた。
その本は小さな冊子で、開くと動物のような絵が並んでいる。
前にこの図書室で見つけ、幾度となく手に取っているのだが……中身がラテン語で書かれているので内容がよくわからない。
しかし絵はとても綺麗で、見たことのない動物の絵が並んでいる。
「うーん、なんだろう、この動物……」
と呟いた時。
兄のリュシアンが図書室へと入ってきた。
「レティか。……珍しいな、お前がこんな所にいるなんて」
「リュシアンこそ。いつもは武器庫か厩舎にいるのに。一体どうしたの?」
と言ったレティに、リュシアンは困ったようにカリカリと頭をかいた。
リュシアンはレティより3つ年上の19歳で、今はカレッジに通っている。
レティと同じく、詩学や舞踏よりは乗馬や剣技に興味を持っており、図書館に来ることはめったにない。
「カレッジの宿題でさ。フランク王国時代の剣技について調べてこいって。でもオレ、ラテン語得意じゃないんだよな~」