千の夜をあなたと【完】



リュシアンは困り果てた様子で言う。

リュシアンは非嫡出子ではあるがリカードの後継であり、リュシアンも来年の春にはウェルシュ伯爵の娘・アマンダを娶る予定だ。

ちなみにウェルシュ伯爵の妻はリカードの妹で、二人は従兄妹という関係になる。


「イーヴがいれば教えてくれるんだろうけど……。あいつ、ラテン語読めるしな」

「でも絶対にタダでは教えてくれないと思うよ? そんなこと言ったら、一体代わりに何を要求されるか……」


と言ったレティの後ろから。

くすくすと笑い声がし、レティはぴしっと背筋を固まらせた。

――――既に聞き慣れてしまった、その声。

恐る恐る振り向いたレティの目に、金髪の青年の姿が映った。


「珍しい所に珍しい取り合わせだな」

「イーヴ!」


リュシアンはイーヴの姿を見、目を輝かせた。

二人は年齢が近いということもあってか、割と仲が良い。

イーヴは何やら大きな本を片手に図書室へと入ってくる。

どうやら本を返しに来たらしい。



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