千の夜をあなたと【完】
「……うそ……」
レティはドアの下に挟まっていた封筒を拾い上げた。
中から出てきたのは、上質な紙でできた小さなカードだった。
かすかに漂うハーブの香りに、胸がトクンと高鳴る。
『誕生日おめでとう。 E.H.B』
そっけない文面。
でも、とても彼らしい感じはする。
レティは目頭がじんわりと熱くなるのを感じた。
「……イーヴ……」
『ベスティアリー』はそれなりにページ数もあり、一日で翻訳できるものではない。
きっとイーヴはレティがこの本を気に入っていることを知り、時間をかけて翻訳してくれたのだろう。
昨日は全然そんな素振りも見せなかったのに……。
レティは突然のプレゼントに戸惑いながらも、心の底から嬉しさが湧き上がってくるのを感じ、滲んだ瞳でカードをくいいるように見つめていた。