千の夜をあなたと【完】
モルガンの横にいたザインはカッと頭に血を昇らせ、ライナスに切り掛かった。
――――瞬間。
ひゅん、という音とともにライナスの短剣が舞った。
肉を切る音とともに、鮮血が宙に舞う。
「……一、二」
ライナスは数えながらザインの胸元、そして喉元を切り裂いていく。
……全く容赦のないその剣筋。
ザインは一瞬で倒れ伏した。
それを見たケルビンは、横からライナスに切り掛かった。
「きさま……っ」
ケルビンの剛剣がライナスを襲う。
ライナスはそれをさっとかわした後、勢いが止まらず体勢を崩したケルビンの脇腹に短剣を突き入れた。
そしてもう片方の短剣を、返し手で胸の真ん中あたりに突き刺す。
「……三、四……」
ライナスの声とともに、ケルビンの体が地面に斃れる。
ライナスはケルビンの体から短剣を抜き取り、軽く振って血を払った。
その冷酷な表情はもはや人間とは思えない。
表情を変えずにあっという間に二人の男を殺す様は、まさに『氷眼の狂剣士』だ。